毒親と縁を切り新しい人生を歩みたいあなたへ – 住民票などの閲覧・交付制限

毒親と縁を切る 社会問題

毒親と縁を切り自分の人生を生きるために

今回の記事は、幼少期から毒親による虐待を受けて育った私が、完全に毒親と縁を切りたいと決意して行動した記録の一部になります。その際に助けになるかもしれない制度について紹介します。

日本には親と縁を切るための法制度がない

今の日本には、たとえどんなにひどい親であっても「親子の縁を切る」ことを実現することを支援するための法制度がありません。したがって縁を切るといっても、あくまで個人の行動によって、ある意味、疑似的に縁を切った状態を作り、それを守っていくしかないということになります。

縁を切るためにしなければならないことはたくさんあるが

縁を切ると書くのは簡単ですが、実際にはとても大変なことです。あなたがそれを決意して一生その決意を貫くことができるかという問題はもちろんのこと、親はあなたのことを知るための権利と時には義務もあるため、しばしばそうしたルールが縁を切ることを困難にすることも少なくありません。

引っ越しても住民票から新住所は簡単にわかってしまう

そこでまず問題になってくるのが住民票や戸籍といった情報です。まず結論から説明すると、あなたが毒親と縁を切りたいと願い、行き先を告げずにどんなに遠くに引っ越したとしても、あなたの親はあなたの引っ越し先を簡単に調べることができてしまいます。

住民票の写しは誰が見られるのか(除票)

まず、引っ越しをされた方ならなじみのあるであろう住民票についてはどうなっているのでしょうか。住民基本台帳法の第二十条では以下のように定められています。

(除票の写し等の交付)
第十五条の四 
市町村が保存する除票に記載されている者は、当該市町村の市町村長に対し、その者に係る除票の写し(第十五条の二第二項の規定により磁気ディスクをもつて除票を調製している市町村にあつては、当該除票に記録されている事項を記載した書類。次項及び第三項並びに第四十六条第二号において同じ。)又は除票に記載をした事項に関する証明書(次項及び第三項並びに同号において「除票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができる。

3 市町村長は、前二項の規定によるもののほか、当該市町村が保存する除票について、次に掲げる者から、除票の写しで除票基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項その他政令で定める事項をいう。以下この項において同じ。)のみが表示されたもの又は除票記載事項証明書で除票基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該除票の写し又は除票記載事項証明書を交付することができる。

一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために除票の記載事項を確認する必要がある者

二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者

三 前二号に掲げる者のほか、除票の記載事項を利用する正当な理由がある者

出典:住民基本台帳法

まず「除票」とは何かについて説明します。引っ越しをすると旧住所の役所に「 除票 」というデータが残ります。この除票を確認することによって引っ越し先もわかります。

そして、その除票は誰が見られるのかについて定めているのが上に引用した住民基本台帳法の該当箇所です。簡単に説明すると、親と同居している人は「除票」に親の名前が載っていますから、その人はあなたの除票の写しを役所で請求することができるということです。これでは毒親がその気になればあなたがどこに引っ越したかを知るのは簡単ですね。

除票に記載のあるもの以外にも、「正当な理由がある者」もまた除票の請求をできると定めがあります。正当な理由とは、一般的には借金を踏み倒された人が債権を回収するためなどの理由です。

戸籍の写しは誰が請求できるか

次に、人によってはあまりなじみがないかもしれない戸籍について、第三者が交付請求をした場合のルールを見てみましょう。

第二十条 市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(当該戸籍の附票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされ、かつ、当該記載が消除された者を除く。)を含む。次項において同じ。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、当該市町村の市町村長に対し、これらの者に係る戸籍の附票の写し(第十六条第二項の規定により磁気ディスクをもつて戸籍の附票を調製している市町村にあつては、当該戸籍の附票に記録されている事項を記載した書類。次項及び第三項並びに第四十六条第二号において同じ。)の交付を請求することができる。

出典:住民基本台帳法

両親は上で黄色くマーカーした「直系尊属」にあたりますから、親はあなたの住民票の写しの交付を請求することが認められているわけです。親子の関係は戸籍にすべて残っていますから、役所の担当者はすぐに毒親とあなたが親子関係であると確認することができます。そして親子関係が証明できた以上、戸籍の付票を開示しない理由はありません。

総務省が実施する「住民基本台帳事務における支援措置」を利用する

これでは毒親と縁を切りたいと考えて引っ越し先を告げずに引っ越しても、すぐに引っ越し先をつきとめられてしまいますね。

何か方法はないのか・・

そこで活用できる支援措置があります。
総務省が実施する「住民基本台帳事務における支援措置」という仕組みです。

この制度は、現在進行形で配偶者やパートナーからの暴力(DV)に苦しんでいる方のみならず、幼少期に虐待を受けた人が、その親やきょうだいなどからの追跡を防ぐ必要があるという場合にも利用できるようになっているのです。

総務省WEBサイト
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html

現在、世帯の中にいる人以外の住民票や戸籍の除票の閲覧をブロックできる

この制度を利用すると、1年間の間、現在世帯を同一にしている人以外からの住民票などの閲覧を禁止にすることができます。1年間ごとに更新する必要があります。

私の体験談

私が実際にこの制度を利用した際の手づ付きの流れについて説明します。以下の流れは私が住んでいた自治体の場合で、その他の自治体では運用が異なるかもしれませんのでご了承ください。

※長くなってしまうので詳細な体験談はまた改めて別の記事にしたいと思います。今回は概略だけでご容赦ください。

現住所の役所で相談

この制度を利用したいと伝えましたが、もしかするとこの制度を利用する人が私の自治体では多くないからか、さらに私が男性ということで、この制度が主に想定する利用者の一般的なイメージ(DV被害者)と異なっているということもあるのかもしれません。そんな次第で最初はなかなか話が通じず説明に時間を要しましたが、最後はわかっていただけました。

まずはDV相談支援機関に相談する必要があると案内されました。支援を行うかの判断は役所が単独で行うのではなく、その相談機関の意見書も加味して判断するという仕組みになっているとのことです。

あとは、警察署にも行ってDV相談をしておくようにとも案内されました。

おすすめ:上記の総務省のWEBページを印刷して持っていくと話が早いかも

役所の中でも詳しい人しかわからないかもしれないので、できれば事前に電話などでアポを取っておくほうがいいです

DV相談支援機関

電話での相談が1回。面談での相談が1回でした。相談専門の窓口なので、担当の方は終始親切で思いやりの感じられる対応でした。

警察署に相談しておく

最初に電話で問い合わせた際には担当の方は少しぶっきらぼうな感じでしたが、実際に訪問すると「この人は本気なんだな」と分かってもらえたように感じました。毒親とのこれまでの経緯を話して、メモをもらいました。そのメモに書いてある電話番号に電話すれば今日の話はわかるようになっているからと親切に教えてくださいました。

現住所と転入先(引っ越し先)の役所で手続き

両方の役所で手続きして、すべて完了です。支援措置が開始されたら双方の役所から通知が届きます。

親と縁を切って困ること – 賃貸の緊急連絡先

多くの場合、毒親と縁を切るということは、すべての親族と縁を切ることに等しいと思います。私の場合がそうでした。なぜなら、たとえば親戚と連絡を取って近況について話した結果、毒親に居所が伝わってしまうというリスクあるからです。

親族と縁を切った場合に困ることの一つに、賃貸契約に必要な緊急連絡先を頼める人がいないということがあります。以下の記事では緊急連絡先を頼める人がいない場合にどうすればいいのかについてまとめています。

結局は自分の決意と覚悟

前にも書きましたが、毒親と縁を切るためにやるべきことは今回の制度の利用だけではなく他にも気をつけないといけないことはたくさんあります。しかし結局は自分の決意と覚悟が大切です。

おわりに

今回の記事では毒親と縁を切り自分の人生を歩みたいと考えている人の助けになるかもしれない制度についてまとめました。
それでは今日はこの辺で。最後までお読みいただきありがとうございます。

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